本日は、ディスカバー・トゥエンティワンから、2024年7月に出版されている、三宅香帆氏が著者の『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』という書籍について、紹介しようと思います。
1.著者について(経歴等)
著者の三宅香帆氏は、文芸評論家で、京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程を修了しており、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」の著者で、2024年には書店員が選ぶノンフィクション大賞を受賞されていらっしゃいます。私も同書籍を読み、すでに記事にしていますので、よければそちらの記事も読んでみていただければうれしいです。仕事(労働史)と読書の変遷を著者独自の視点で振り返り、最後には現代社会への働き方、読書に対しての著者なりの考え方が述べられており、大変参考になる作品でした。
2.本書を手に取ったきっかけのキーワードは言語化
私は、2024年12月からブログを書き始めたのですが、やはり文章術というか、自分の思いを言語化することについて、もっと身につけられたらいいなぁと思っていました。仕事上で、他人の文章を校閲・校正することもやってきましたし、自分でも資料作成のために文章はたくさん書いてきましたので、書くことに対して抵抗はない、むしろ話して伝えるより文章の方がいいくらいなのですが、それでも不特定多数の方に自分の伝えたいことを書くというのは、やはり仕事で文章を書くのとは違いますね。仕事では、会社を背負っていますし、自分の思いを伝える文章ではないので、文章を書く目的が全く違います。
ただ、なんとなくですが、ブログを書く上では、文章スキルがどうかよりも、伝えたい思いや相手に何を得てほしいか、相手は何を知りたいのかなどの方が重要な気がしてたので、自分が記事にしようと思う題材については、あえて他人のものは目に入れずにまずは自分なりに書くことを意識するようにしていました。そんな中、三宅香帆氏の2023年に出版した『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』の携書版(新書サイズ)として刊行されたものが、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」と一緒に書店に並べられているのを見て、自然と興味が湧いたので、読んでみることにしました。
3.本書の魅力は、自分の感情を大切にしつつ、わかりやすく文章術が学べること
本書は、すごく読みやすく、さらっと読めてしまいます。やはり「推し」、広く捉えれば、「自分の興味関心の強く持っていること」になるかと思うので、それをどう伝えるかってことを考えるだけでワクワクする感じもあり、読むペースも加速したかもしれないです🤣ちなみに私は読書好きですが、読むのは遅いです。それでも、勢いで読めてしまう感じです。おそらく、本書の文章で使われている言葉が重苦しくなく、すごく軽く、友達や仲の良い先輩と語り合っているような感じだからのように思います。
本書の内容について触れていきますが、推しを語るにあたり、やばい、泣けると言ったワードはメディアでも使われ、ありきたりな言葉になってしまうので、自分オリジナルな感情、考え、印象、思考を言葉にすることで、オリジナルな表現が出来上がると、著者は伝えています。また、世間や他人がインストールしてこようとする言葉に対して、「自分は本当にその言葉でいいんだっけ」と立ち止まることが自分の感情や思考を取り戻す重要なプロセスとも伝えられています。
著者の言うように、今の世の中、スマホを見れば、すぐにあらゆる情報が飛び込んできますので、受け取った情報について、自分の感情なのか他人から押し付けられた感情なのかわからなくなる、つまり周りに流されているのにそれにすら気づかないこともあるように思うので、立ち止まることの大切さを理解した気がします。また、本書に書かれていることをさりげなく実践していましたが、自分の感情等を文章化する前にはそのことに関する題材をSNS等で見ないようにすることを著者は薦めています。せっかくブログ等で発信するなら、他人の意見に流されず、自分の思いを伝えたいですよね。ということで、自分の感情を一番大切にすることを本書では伝えてきています。
一方で、自分の好きが揺らぐことも当然ありますよね。その時々で好きなものが変化していくことはむしろ当たり前のようにも思っています。小学生の頃と大人になってからで同じものを好きでいられ続けているものばかりではないはずですよね。だからこそ、著者は、好きを言語化し(日記でもいいし、SNS等で発信してもいい)、言葉として保存しておき、そうすると、「好き」の言語化が溜まってゆき、気づけば丸ごと自分の価値観や人生になっているはずと伝えています。
そうは言っても、ここまでの内容はかなり抽象的で、「実際どう言語化すればいいの?」ってなります。本書では、SNS等を見る前に、①良かった箇所の具体例を挙げる②感情を言語化する③忘れないようにメモをする。この①~③のプロセスを踏むことを薦めています。そして、言語化というのは、いかに細分化できるかどうかであり、いろいろな具体例が紹介されております。また、これはあくまで記録する作業になりますが、この先に発信したいとなる場合には、相手との距離を知る必要があるというのです。つまり、ターゲット層をどう考えるかです。同じようなファンへ向けた文章であれば、細かな説明は省略して、推しだけがわかるワードを用いて、推しの部分を書くだけで伝わりますが、推しについて幅広い人に知ってもらい、ファンを増やしたいのであれば、詳細な説明であったり、フラットな文章を心がける必要があるというのです。言われてみればその通りですよね。ついつい、自分の推しへの想いを一方的に語ってしまったりしますが、読者のターゲット層を意識する必要はありますね。
本書の後半では、実際にどのように書き出すべきか、パターンの紹介や実例(AとBの文章を読んでみての印象を解説など)紹介などもあり、推しの素晴らしさに限らず、文章を書き進めるにあたっての学びがあります。私の中で重要だなと感じたのは、まずは勢いで文章を書いてしまい、必ず修正をすることです。その中で、文章の順番を入れ替えたりして、全体の印象を整えることが大事かと思いましたね。実践していることではあるものの、意外と勢いで投稿してしまうこともあるので、やはり時間を置き、客観的な目で読み直すことが、読者にとって読みやすい内容にできるかどうか大事になってくるように感じました。
4.まとめ
いかがでしたか。もし、興味が湧いた方はぜひ本書を読んでみてください。SNSやブログ等で自分の感情を発信する際の参考になるかと思います。
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「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない [ 三宅香帆 ] 価格:1320円 |
なお、私の中で、読んだ本をブログで紹介する際に心がけていることとして、「全体を語らない」を意識しています。個人的に大事だなと感じたところであったり、本の読み始めのセクションや重要なセクションなどを紹介するに止め、このブログを読めば、一冊読んだ気になるようにまとめることは想定していません。あくまで、読んでみようかなというきっかけ作りになるように意識しています。
本1冊に対しての感じ方は無数にあると思っていて、人それぞれ刺さる部分は違うと思うのです。それがまた面白いのだと思いますので、本一冊丸ごとのイメージを押し付けないようにはしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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