本日は、集英社新書から出版されている三宅香帆氏の「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という本を、紹介しようかと思います。
まず、本の帯にある「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」というキャッチコピーに惹かれて読んでみることにしました。この本では、明治時代から令和までの労働と読書の歴史について、著者なりの考察をもとに書かれています。明治・大正・昭和(戦前・戦中・1950~60年代・1970年代・1980年代)・平成(1990年代・2000年代・2010年代)・令和という時代・年代の中で、エリート層・サラリーマン・労働者階級、それぞれにおける読書の価値が示されております。昔は、読書自体がエリート層のもの、サラリーマンに手が届くようになれば、彼らにとっては本を書棚に並べることがステータス等、労働と読書を結び付けて歴史を感じることはなかなか面白いと思いました。
なお、この本では、「そもそも労働と読書は両立しないのか?」という問題提起されています。たしかに仕事が忙しいと、読書はおろそかになったりする自分がいるなぁと思いました。一方でスマホやタブレットは、暇さえあれば触っているような気もします。1日24時間と限られている中で、仕事・育児・家事・介護といったことをこなさなければならない現代人にとって、読書する隙間はあるのでしょうか。必要な情報だけをインターネットで調べてそれを仕事に活かす方が、読書に比べてノイズ(無駄)がなく、効率的ともいえるわけですね。でも、読書だからこそ、想定外の知識を得ることもあったりするわけで、それが読書の良いところかと思っています。著者は、この本の最終章で、「全身全霊をやめ、半身で生きる社会にしませんか?」と綴っております。これには私も賛成です。
著者の言うように、男は仕事に全身全霊、女は家事に全身全霊できた時代と今は異なり、すべてを全身全霊でやっていては体が壊れてしまいます。「24時間働けますか?」の時代ではありません。今の時代に合った生き方を考えないと、少子高齢化などの社会問題の根本解決にはつながりません。
会社にとって、業績を右肩上がりにする上では、人手不足は大きな問題であり、AIなどの技術をさらに取り入れないと、一人当たりの負担は、ますます増えるばかりになってしまいます。しかし、私自身が体を壊してしまい、今思うのは、日本人はもっと気楽に生きることを意識してもいいんじゃないかなと思います。
仕事(育児・家事・介護)ばかりの人生が苦にならない人はいいかもしれませんが、私は人生一度きりと思うと、半身で読書や趣味など好きなことに充てる時間をもっと増やすことが、こころを豊かにし、健康でいられるのでは、と思うのです。
私の説明不足感は否めませんが、興味を持った方は、ぜひ読んでみてください。
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なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書) [ 三宅 香帆 ] 価格:1100円 |